自殺島
『自殺島』(じさつとう、Suicide Island)は、森恒二による日本の漫画作品。『ヤングアニマル』(白泉社)にて、2008年22号より連載中。2011年9月時点で、単行本は6巻まで刊行中。
日本近海の孤島を舞台に、政府によりこの島に送りこまれた自殺未遂常習者達が、命の意味と向き合いながら生きていく物語である。作中では、食糧を確保するため登場人物達が狩猟採集をする姿が描かれており、前作『ホーリーランド』と同様に作者の経験を交えながら図解付きでサバイバルに関する説明がなされている。森恒二は実際に何度も南の島に足を運んで海で突き漁をしたり、京都で猟師と一緒に山に入ったりしており、その時の経験があるから狩りのシーンも自信をもって描けたと語っている。
この作品中の日本は、国民はIDによって政府に管理されており、そのIDが剥奪されるという事は日本国民としての権利と義務を失う事を意味している。舞台は基本的に島の内部とその周辺の海域に限定されており、日本本土での様子は登場人物の過去の回想、または「凶悪犯罪が増加している」、「自殺者が急増しているが彼らを支援し立ち直らせるための予算が不足してきている」等、伝聞や噂の形でのみ語られている。
ストーリー
主人公セイは自殺未遂を繰り返した末に、「生きる義務」を放棄した意思を示す書類にサインをする。病院のベッドの上で意識を失ったセイは、目が覚めた時、自分がまだ生きており、そして自分と同じ未遂者達が周囲に何人もいる事に気付く。そして、ここが自殺を繰り返す“常習指定者”が送り込まれる島、「自殺島」である事を知る。その直後、未遂者達は飛び降り自殺をする瞬間と死に損ねた者のおぞましい姿を目の当たりにし、一時自殺することを踏みとどまる。“死ねなければ生きるしかない”彼らのサバイバルが始まる。
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登場人物
島の人々
- セイ
- 本作の主人公。自殺未遂の常習者。物語開始当初は20歳。オーバードラッグとリストカットによる自殺未遂を繰り返し、「生きる義務」を放棄した「常習指定者」となる。その後、意識を取り戻した時、他の常習指定者達と共に自分が見知らぬ孤島に放置されている事に気付く。
- 学生時代に出会った先輩の青山から弓矢の事を教わり、その知識を基に試行錯誤を重ねながら自作の弓矢を完成させる。その弓を使って狩猟をするようになり、それを通じて命の意味を再認識していくようになる。
- リヴ
- 常習指定者の1人。セイが島で目覚めた際に近くにいた、長い髪をした美しい女性。本名は「マリア」だが、本土での過去を思い出すため、この名で呼 ばれることを嫌がっている。リヴというのはセイが考えた名前で、セイ(生)やイキル(生きる)と同じ「Live(生きる)」という意味を込めてつけたも の。
- 島で過ごした最初の夜が明けた後、セイを誘って廃校舎の屋上から投身自殺を図るが、その場は思いとどまる。以後、島で精一杯生きようとするセイを見続け、次第に惹かれていく。
- 母親がロシア人のハーフ。10歳の時、母が自分を置いて故郷に帰った後、暮らしが荒んでいった父親の元から、父の親戚の家に預けられる。そこで養父から性的虐待を 受け続け、その仕打ちに対して心と体を切り離し人形のようになることで耐えてきた。義務教育を終えた後、家を出て一人暮らしを始めるが、男性と付き合って も過去の記憶が甦り、養父への虐待を受けていた時と同様に人形のようになってしまい、それが原因でどんな男性が相手でも上手くいかず別れてきた。
- トモ
- 常習指定者の1人。長い髪を後ろで束ねている。セイと仲が良い。過去に沖縄で暮らしていた事がある。
- 小さな街の医者の家に生まれ、両親と妹がいるごく普通の家庭に育った。しかし、中学生になった頃から自分が性同一性障害であることに気付き、悩んでいた。隠し持っていた女物の服が見つかったことを機にそのことを告白してみたものの、父親からは理解されず「化け物」呼ばわりされる。父親は障害を無理やり矯正しようとし、このことが原因で家族も崩壊していった。
- セイが自分の性同一性障害のことを知りながらも全て受け入れてくれたことを機に、グループの全員の前で告白。グループの女性たちはそのことに既に気付いており、また他の面々も戸惑いながらも受け入れた様子である。
- リョウ
- 常習指定者の1人。未遂者とは思えぬ程、活力に満ちた青年。グループのリーダー格となり、皆を引っ張る。
- かつて同棲していたエリという恋人を交通事故で亡くし、それ以来、彼女の元へ行く事ばかり考え、彼女を亡くした交差点で何度も自殺を試みたが、それでも死ねなかったという過去を持つ。
- 自分の死に場所を自分で決めたいという思いから本土への帰還を望み、自作の筏で有志と共に本土へ戻ろうと試みたものの、哨戒していた巡視艇に筏を 破壊された。なんとか島に帰り着くものの、それからは心を閉ざし、1人で漁をしていたが、セイの説得で再びグループに戻ってくる。
- スギ
- 常習指定者の1人。眼鏡をかけた青年。本名は杉村。自殺島の事を知っていた。グループの中でも頭が良く、知恵袋的な存在となる。塩を採る際に塩田を提案し、リョウが筏で本土へ戻ろうとしたときには自作の方位磁針を彼に渡した。
- 本土にいた際、首吊り自殺を試みて失敗した過去を持つ。子供のころから人と接することが苦手で、大学を出た後「1人で幸せを得る」ために文筆業に なることを志す。しかし、そこでも人とのコミュニケーション能力が必要であるという現実にぶつかり、やがて何も書けなくなり、自殺へと追い込まれていっ た。
- カイ
- 常習指定者の1人。セイが自殺未遂をした後に送致された施設で出会った青年。セイより1歳年上。冷静な視点で物事を見据えている。リョウと共にグ ループの指導者となるが、他のメンバーとは一線を引いた態度が多い。農作物による食糧の確保を目指している。しかし、悩みを抱える者に近付き、優しく接し ながらも、絶望を煽るようなことを吹き込み、グループの人間を次々と自殺に追いやっていたことが判明する。そのことに気づきながらもセイ達はカイを止めら れず、カイに心を寄せ彼を信奉する者達もグループ内に増えていく。
- イキル
- セイが狩猟のパートナーとして飼う事にした子犬。元は山奥に1人で潜み暮らしていた男が飼っていた犬の中の1匹。
- タナカ
- 常習指定者の1人。初めて漁をする前日に皆で協力することに期待を抱いていたが、その夜、電気コードで首を吊って自殺してしまった。
- ボウシ
- 常習指定者の1人。髪を長く伸ばし、常に帽子をかぶっている男性。自分の名前を嫌っているため、「ボウシ」と名乗っている。当初は肥満気味の体型 だったが、次第にやつれていく。人に誇れる物が何も無く、セイを「持たざる同志」と呼んでいた。他にできることが無いからという理由で農作業の手伝いをし ていたが、やがて島での生活や狩猟採集に必要な道具を考案し作成することでグループに貢献していくようになる。
- ケン
- 常習指定者の1人。仲間と共にセイを襲い、肉を奪おうとした男。この島で生きようとするセイの姿を見て改心し、セイの理解者となる。セイの協力で弓を作成し、狩りにも同行するようになる。元は港側のグループにいた。ナオに惚れている。
- 父親は親戚の保証人になったため多額の借金を抱えており、ケンが物心ついた時には利息を返すためだけに働いているような状態だった。そんな父親を見て育ったため、何もやる気が起きず、本土で暮らしていた時はただ死ぬまでの日々を漫然と過ごすだけであった。
- 吉村
- 常習指定者の1人。セイを襲い、肉を奪おうとしたが、夜の山中で恐怖にかられ、パニックに陥って大怪我をする。自分のしようとした事を悔やみ、セイに謝罪しようとしていたが、その前に怪我が元で死亡する。
- 青木
- 常習指定者の1人。セイを襲い、肉を奪おうとしたが失敗。グループに逃げ戻った後、セイを孤立させるべく、真相を捻じ曲げて皆を扇動しようとする が、嘘が発覚し逆に自分が孤立する。居場所が無くなったことに怯えていたが、「何者か」に自殺を促された後、翌朝に縊死体となって発見される。
- ミノル
- 常習指定者の1人。実家は農家で、経験を活かして農作業に従事する。
- ユミ
- 常習指定者の1人。本土では看護師をしていた。怪我人が出た際に看病をする事が多い。
- ミキ
- 常習指定者の1人。髪を肩まで伸ばした、そばかすが特徴的な女性。素潜りが得意。リョウに好意を抱いており、リョウが筏を作って島を出ようとした時も行動を共にした。
- 本土にいたころは、依存するばかりだったことが原因で恋人に去られ、以後も同じように恋人との別れを繰り返していく内に精神的に追い詰められて、服薬による自殺未遂を行うようになった。
- さおり
- 常習指定者の1人。何かと相談に乗ってくれていたカイに恋愛感情を抱く。カイに自殺を促された際、もう少しがんばってみようと自殺を思いとどまろうとするが、絞殺される。死後、首吊り自殺に偽装されるが、スギが他殺と気付く。
- ナオ
- 港側のグループからセイ達のグループに移動した女性。自称「癒し担当」で、この島で売春をして生活してきた。挑発的な服装で、島にいる他の女性達とは違う雰囲気を持つが、多くの未遂者達と同様、手首にリストカットの痕がある。
- サワダ
- 港側のグループのリーダー。島に来た当初は、食料の確保を率先して行い、他の面々を導いてきたが、やがて「暴君」となり、さらには人間の死体をも 食べるようになり、そのためにグループに所属している人間達からは怖れられている。ナオに執着し、自分のもとに連れ戻すよう、グループのメンバーに命じ る。
その他
- 青山 英子(あおやま えいこ)
- セイと同じ学校に通っていた女生徒。弓道部部長で図書委員。セイに弓矢の事を色々教える。
- 教師との許されない恋愛に苦悩し、ある日投身自殺する。
- エリ
- かつてリョウと同棲していた恋人。出会う以前は寂しい環境にあったらしく、リョウとは「似た者同士」だった。3年ほど生活を共にしたが、ある日バイクで2人乗りをして走行中、交差点で居眠り運転の車と衝突し、死亡した。
- 今でもリョウは彼女を想い続けており、彼女の死はリョウの度重なる自殺未遂のきっかけとなった。
自殺島
何人もの自殺未遂の常習者達が送り込まれた孤島。家屋や廃校舎、生活物資等、かつて住民がいた形跡があるが、従来の住民は既に残っていない様子である。家屋の中には何体もの白骨死体が残されており、山中にも自殺したと思われる死体が発見された。
政府の人間によって立てられたと思しき看板に、この島に送り込まれた者達はIDを剥奪されて、国民としての権利と義務を失った事と、この島と周囲の近海1km以内より外に出る事を禁じる旨が書かれている。日本近海にあるようだが、正確な位置や島名は不明。
自然に囲まれており、多くの草木や動物が生息し、食用に適した果実等も自生している。天敵がいないためか、鹿の数も多く、猪による農作物の食害も発生している。島の住人が飼っていたらしい鶏などの家畜も生息し、畑地だった場所から残された農作物が発見されることもある。
セイ達が住む島の北西に小さな離島があり、そこには野生化したヤギの群れが生息している。捕食者のいない環境で増えすぎたヤギによって、離島の植生は食べ尽くされそうになっている。
狩猟のために山に入ったセイが出会った男の話によると、この島はかつては凶悪犯達が送り込まれ、お互いに殺し合いをした「無法島」であったという。
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